こんにちは。
分子栄養学認定カウンセラーの千野ひとみです。
今日は、最近よく耳にする「炭水化物抜きダイエット」や「糖質制限ダイエット」についてお伝えしていきます。
炭水化物=糖質?
まず、「炭水化物」と「糖質」について見ていきましょう。
炭水化物とは、ご飯やうどん、パンなど、主に主食として食べるものですね。
そして【炭水化物=糖質+食物繊維】です。
つまり、「炭水化物抜きダイエット」と「糖質制限ダイエット」は、少し意味が違うのですが、炭水化物には糖質が多く含まれますので、同じように使われている場合が多いですね。
食物繊維は、最近では5大栄養素に次ぐ6番目の栄養素ともいわれるようになった、人間に欠かせない栄養素です。
つまり、炭水化物を抜いてしまうと、食物繊維の摂取量まで減らしてしまうということです。
炭水化物って、食べなくても大丈夫なの?
これだけ、ダイエット法として流行しているので、炭水化物を抜くことに対して、何のためらいもない方がほとんどだと思います。
ですが、炭水化物を摂らなくても、本当に問題ないのでしょうか?
糖質は、重要なエネルギー源
ここでは、炭水化物に含まれる「糖質」についてお伝えしていきますが、糖質は、私たちのエネルギー源となる、とても重要な栄養素です。
人間がエネルギーとして活用できるのは、3大栄養素といわれる、糖質、タンパク質、脂質の3つです。これらの栄養素からエネルギーをつくり出すことで、私たちは生きていくことができます。
タンパク質や脂質もエネルギーをつくり出せるなら、糖質を摂らなくても大丈夫そうに思えますよね?
ですが、糖質だけをエネルギーとしている臓器があるんです。
それは、脳や赤血球です。
脳や赤血球は、糖質しかエネルギーとして利用できないため、糖質の摂取は必要なんです(一部例外あり)。
しかも、脳は、身体の中でもエネルギー利用比率がとても高い場所です。
お腹が空くと頭が働かなくなったり、勉強するとお腹が空いたりするのは、脳はものすごくエネルギーを必要とするからなんです。
臓器、組織 | エネルギー代謝比率 |
骨格筋 | 22% |
脂肪組織 | 4% |
肝臓 | 21% |
脳 | 20% |
心臓 | 9% |
腎臓 | 8% |
その他 | 16% |
厚生労働省 「ヒトの臓器・組織における安静時代謝量」の表より作成
血糖値を安定させることが重要
「血糖値」という言葉を聞いたことがあると思います。
血糖値とは、血液中にある糖質量のことで、食事をすると血糖値が上がり、その後ゆっくりと下がっていき、約70~110mg/dlの範囲で保たれています。
この血糖値は、高過ぎることも低過ぎることも問題で、一定の範囲内で保たれるように、ホルモンによってコントロールされているんです。
血糖値が上がり過ぎた場合に、下げてくれるホルモンがインスリン、
逆に、血糖値が下がった時に、上げてくれるのは、アドレナリンやノルアドレナリン、コルチゾール、成長ホルモンなどです。
つまり、これらのホルモンが正常に分泌されないと、血糖値が保てず、様々な体調不良や病気につながります。
そのため、炭水化物を抜いて糖質を摂らなかった場合、血糖値は低い値になります。
そして70mg/dlよりも下がらないように(個人差はあります)、アドレナリンやコルチゾールなどを分泌して、血糖値を上げようとします。
糖がないと、糖をつくり出す
エネルギーとしても、血糖値を保つためにも、私たちの身体には糖は欠かせません。
そのため、糖が入ってこない場合、私たちは、体内で糖をつくり出すシステムが備わっています。これを「糖新生(とうしんせい)」といいます。
主にアミノ酸(タンパク質)から、肝臓で糖をつくり出します。
つまり、筋肉を分解してしまいます。
さらに、肝臓が元気でないと、糖新生を行う能力がありません。
炭水化物ダイエットは、失敗する人も多い
このように、炭水化物や糖質は、私たちの身体にとっても重要な働きをしてくれているんですね。
もちろん、食べ過ぎている場合には、減らして適正量にすることは必要ですが、そうでない場合には、極端に制限してしまうのは、あまりおすすめできません。
人によっては、糖質を摂らないことで多くの問題が起こり、体調を崩す方が多いからです。
・血糖値のコントロールがうまくできない場合や肝臓が元気でない場合、糖質を抜くと低血糖状態に陥る
・低血糖症状は、倦怠感を感じたり、イライラしたり、甘いものが欲しくなったり、睡眠の問題を抱えることもある
・食事からの糖が足りないと、筋肉を分解して糖をつくり出すため、筋肉量が落ちてしまう
・血糖値を上げるホルモンを分泌する副腎などの臓器が疲弊していると、血糖値を上げられず、慢性的な疲労が続いたり、朝起きられなかったり、やる気が出ないなどの症状が起こる
様々なダイエット法がありますが、効果が出るかどうかは、その方の身体の状態に左右されます。
さらに、長期的に見た場合、健康を害する可能性のあるものもありますので、ダイエットをする場合は、専門家にアドバイスをもらってみてくださいね。