猫背とは

猫背と言うと、「背中が丸まっている」という印象をお持ちの方が多いと思いますが、現代人の多くは、スマートフォンなどを見ようと、頭が前に移動し、首の付け根の部分だけが過剰に丸まり、背骨は真っ直ぐになったり、過剰に反っている場合がほとんどです。

首の付け根の部分が過剰に丸まっている為、一見すると背中が大きく丸まっている様に見えるのですが、過剰に丸くなっているのは一部であり、それ以外は本来の丸みが失われて真っ直ぐになっていり、反りが強くなっているんですね。

理想的な姿勢と背骨のカーブ

現代人の猫背と背骨のS字カーブ

もう少し具体的に見ていくと、背骨は首(頚椎)、胸(胸椎)、腰(腰椎)、お尻(仙骨)尻尾(尾骨)といくつかのパーツに分かれていて、 全体的には「S字」を描くのが正しい姿勢です。

先述の様に、現代人の猫背というのは、頭が前方に移動し、この頸椎と胸椎の移行部だけが過剰に丸まり、他の胸椎部というのは、本来の丸みが失われて真っ直ぐになっています。更には肋骨が前へとび出し、骨盤が過剰に前傾した状態のことをさします。

脳の機能低下による姿勢の歪み

なぜこの様な猫背が多く見られるのか?ということを考えていくと、様々な要因が考えられますが、「脳の機能低下や不活性」ということが考えられます。

そして、その要因の1つとして、いわゆるスマホやパソコンなどのデジタルデバイスの普及と使用時間の長時間化が考えられます。

モニターを見る為に、頭を前に出しやすいことや、デジタルデバイスの使用に伴う脳の血流量の低下、視覚機能の低下や口呼吸の誘発などがあげられます。脳が発達する為には、「酸素」、「栄養」、「適切な感覚刺激」などが必要となりますが、デジタルデバイスの過剰な使用により、脳の血流低下や口呼吸が誘発されることにより、酸素や栄養が脳に運ばれにくくなります。

2つめには、活動量および運動量の低下が考えられます。人の身体には、全身に感覚器と呼ばれるセンサーが存在し、身体を動かすことで、そのセンサーが働き、脊髄や脳にたくさんの「感覚刺激」を送ります。それによって、脳の活性化や発達が起こります。

しかし、交通手段の発達や家電の普及に伴い、1日の歩数をはじめ、活動量や運動量が大幅に低下をしています。例えば、「洗濯」1つをとっても、昔であれば、スクワットの様な姿勢でしゃがみ、たらいに水を張り、洗濯板でゴシゴシと洗っていた訳ですが、現在はボタンを1つ押すだけで完了します。

スクワットの様な姿勢をとれば、足首や膝、股関節をはじめとした各関節、筋肉のセンサーが働き、水に手を付けることで「冷覚(れいかく)」というセンサー、ゴシゴシとこすることで「触圧覚(しょくあつかく)」などと呼ばれるセンサーが働き、視覚も活用して、手と目を協調させながら身体を使うということが行われていました。

昔の生活に戻ることは出来ませんが、今後5Gの導入やIOT化が益々進んでいくことで、人の活動量は更に下がっていくことが考えられます。

そして、適切な感覚刺激や栄養、酸素が脳に供給をされていないと、脳は「危険だ!」という判断をくだし、「闘争&逃走反応」と呼ばれる、「交感神経優位」な状態を創り出します。

この脳が危険と判断し、交感神経が優位な闘争&逃走反応が起こっている緊張モードでは、背骨が伸展し、肋骨が前にせり出し、骨盤の位置が歪んでくるだけでなく、肩が前に引っ張られて、いわゆる「巻き肩」の状態になってきます。

これがいわゆる「現代の猫背姿勢」になります。

負の猫背スパライル

脳の機能低下や脳の不活性によって、現代の猫背姿勢=背骨が伸展し、肋骨が前にせり出してくることによって、交感神経が存在する空間が狭くなり、圧迫をされることによって、更に交感神経が優位な緊張モードになり、猫背から抜け出しにくくなるという、負のスパイラルに入りやすくなります。

その為、猫背を改善する為には、早い段階で改善の為のアプローチを行っていくことが大切です。

効果的な猫背の矯正方法

猫背を矯正する上で特にポイントとなるのが、①「脳の活性化」と②「骨盤-肋骨のポジションを整える」の2点です。

身体中に存在するセンサーからの「感覚刺激」が脳に伝わることで脳が活性化をすると共に、「自分の身体が現在どうなっているのか?」を理解することで、安全安心の状態が生まれ、自然と胸が開いて「巻き肩」なども改善をしていきます。

その為、エクササイズを通して身体を動かしていく訳ですが、その際に先ずは身体の要となる「骨盤と肋骨のポジション」を整えることから始めていきます。

骨盤と肋骨のポジションが整う事で、背骨やコアと呼ばれる中心部が安定すると共に、骨盤には股関節が、肋骨には肩甲骨や肩関節、腰や胸の背骨には首が繋がりますので、頭や首の位置が整い、股関節や肩関節の動きも良くなります。

更には、運動が苦手な方でもはじめやすく、かつ効果が出やすい様に、人が生まれながらにもっている、赤ちゃんの発育発達の段階に沿って、仰向けやうつ伏せの状態でのエクササイズからスタートし、四つ這いや片膝立ちなど順々に行っていき、自然とキレイな姿勢で立ち、歩ける能力を獲得していきます。

姿勢改善のメリット

猫背の改善を行う事で、「キレイな姿勢」が手に入り、「見た目が良くなる」というのはもちろんですが、それ以外にも多くのメリットが得られます。

骨盤や肋骨のポジションが整う事で、呼吸に大切な横隔膜の機能が高まり、呼吸がしやすくなったり、コアと呼ばれる筋肉の働きも高まり、背骨や体幹の安定性が増してきます。

また、骨盤には股関節が繋がり、肋骨には肩関節が繋がることから、股関節や肩の動きが良くなりますし、頭の位置が改善をされることで、首への負担も軽減される為、肩こりや首こりの予防改善にも効果的です。

更には、現代の猫背は「交感神経が優位な緊張モード」になっているというお話をしましたが、自律神経のバランスが整い、食事の消化吸収がよくなったり、睡眠にも影響して寝付きが良くなるなど、猫背を改善することで見た目の問題以上に、様々な効果が得られます。

猫背のデメリット